北欧移住は甘くない?スウェーデンの労働市場と仕事探し

スウェーデン在住の私ですが最近「スウェーデン人ですら仕事を見つけるのが難しくなっている」
という話をちらほら聞くようになりました。

新聞でも「200回応募して、すべてにNOを突きつけられた後にデンマークで仕事を見つけた」
人についての記事もあるなど、スウェーデン国内での職探しはかなり困難になっているようです。

私の友人からも、「求人は少ないし、あってもそこに数百人が応募するから競争が激しすぎる」
という話も聞きました。

2025年の前半にはスウェーデン自動車会社のVolvo Carsも大規模レイオフに踏み切っており
スウェーデン労働市場の厳しさを物語っています。

本記事では最新データをもとにEUや北欧諸国との比較を通じた
スウェーデンの労働市場の実態をまとめました。

また厳しい状況の中でどのようにすればスウェーデンや外国での職探しを進められるか
個人的な経験もまとめたので参考にしていただけると嬉しいです!

スウェーデンの労働市場の現状

まずは直近の数字を見ていきましょう。

失業率と雇用情勢

2025年10月時点で、the Global Economyに掲載のEurostatからのによると
スウェーデンの失業率は約8.9%となり、これは2024年の8.5%よりも高い数値となっています。

9月時点のEU平均が6.3%であることと比較すると、スウェーデンの労働市場の厳しさが分かります。

また、スウェーデンの統計局SCBによると、就業者数は2025年3月時点で4,769,000人と
前年から減少傾向にあります。

スウェーデン国内では求人が減り、失業者が増えている、つまり
仕事を探すのが以前よりも難しくなっているということが言えます。

なぜここまで厳しいのか?

ここ数年のスウェーデン経済や労働市場の厳しさにはいくつかの背景があります。

世界経済の減速と金利上昇

近年は世界的にインフレが激しく進み、その抑制のために急激な利上げが行われました。

結果としてそれが経済状態を悪化させ、現在は投資や消費が控えられています。

欧州委員会ではスウェーデン経済は2025-2026年にかけて景気回復が見込まれるものの、
それまでは軟調だという見通しが出されています。

・大企業の相次ぐレイオフ

かつては労働者の受け皿となっていた大手企業が大幅な人員削減を行いました。

これにより人材が大量に労働市場に溢れ、求職者間での競争が激化しています。

また英語だけでなくスウェーデン語も求められる会社が増えてきていて、

私の様な外国からの労働者が新しい仕事を見つけることがかなり厳しくなっています。

・求められるレベルの高さ

経済の状態が苦しい時の常ですが、企業は即戦力のみを求める様になっています。

学歴、職歴、語学力など、すべての能力を見た上で即戦力ではないと就職は難しくなっています。

しかし全く採用をしていないわけではありません

私のスウェーデン語を話せない知人が最近テック系の仕事につけたという話もあります。
ビザのスポンサーもしてくれたとのことでした。

IT系や医療系など、採用を推し進めている分野もあるので
このような技能があり、英語で仕事をするのに問題がない人であればチャンスはありそうです。

先ほども紹介した通り、2026年頃に経済状況が改善するという見通しもあります。

今後投資が活発に行われたら再び会社は人を雇い始めるので、
より多くのチャンスがあるかもしれません。

北欧諸国との比較

一口に北欧といっても経済状況や労働市場の事情は大きく異なります。

ノルウェー、フィンランド、デンマークの3カ国とEU平均と比較した時の
スウェーデンの状況を見てみましょう。

失業率の推移

ここ10年の失業率の推移を見ていきましょう。

参考:OECD

ここ10年間ではノルウェーとデンマークで労働市場の状況がよく
スウェーデンとフィンランドでは厳しい状態が続いているということがわかります。

特にスウェーデンとフィンランドはEUの失業率が下がっているにも関わらず上昇傾向にあり、
明暗がはっきりと分かれている状態になっています。

何が原因でこの差が生まれているのかということを一言では言い表せませんが
その一つの産業構造の違いが挙げられます。

ノルウェーでは北海油田から産出される石油やガスなどのエネルギーや開運・海洋関連が強く
これらは国際需要が戻れば比較的すぐに回復する傾向にあります。

また、ウクライナ戦争以降のエネルギー価格の高騰がノルウェーに莫大な富をもたらしました。

政府年金基金(オイルファンド)という世界最大級の貯金もあり、
不況時でも雇用が守られやすい構造となっています。

デンマークでは製薬会社のノボ・ノルディスクなど
不況時でも比較的安定した需要が見込める分野が強いため雇用が守られやすい構造となっています。

また、デンマークではフレキシキュリティ(雇用の流動性+手厚い再就職支援)モデルがあり
失業になっても早期就職を促す公共サービスや職業訓練の制度が整っています。

一方でフィンランドやスウェーデンは景気に敏感な分野の産業が国を支えている傾向にあります。

フィンランドはロシアとの長い国境を有しているリスク、
スウェーデンではギャング犯罪の増加というリスクを有していることから
海外投資が減少してきているということが労働市場を冷え込ませています。

全体として、COVIDとウクライナ戦争などによる国際的なリスクに対して各国の産業構造の安定性、
地政学的なリスクの大きさというものがこの明暗を分けている要素となりそうです。

また、スウェーデンでは特に移民の割合が多く、
彼らが職探しに苦労しているというところが失業率を押し上げているポイントとなります。

国外生まれの人の割合
スウェーデン:20.8%
ノルウェー:16.8%
デンマーク:14-16%
フィンランド:10.3%1

スウェーデンの移民比率が頭ひとつ抜けていることがわかります。

あらゆる要因が不利に働いて、スウェーデンの失業率を押し上げてしまっているということですね。

北欧での職探しのポイント

この様に労働市場の状況は国によって異なります。

また、状況の良いデンマークやノルウェーで外国人が仕事を見つけるのはこれでも難しいです。

ビザの要件として高い給料が求められたり、ストックホルムやオスロの様な都市では
競争率が段違いで高くなったりとやはり難しいです。

会社にとってビザを発給するに値する人材である必要があるのでそれ相応の準備が必要となります。

ではどのような準備をすれば良いのでしょう。

実際の経験も踏まえた、私の個人的な見解も含めてまとめてみました!

自分のスキルの棚卸し

自分のどんな経験・スキルに魅力があるか、現地の人と比較しても競争力を持てそうか
ということをまとめておくことは大事です。

スキルが同じであれば、コミュニケーションの取りやすい自国民を採用する方が
企業にとって無難な選択になることは想像できると思います。

移住してみたい国・働いてみたい会社でどのような人材が不足しているのか(積極採用しているか)、
その上で自分の経験がどの様なアピールになるかということを考えることが一番大切です。

LinkedInに登録・CVの準備

LinkedInとはビジネスに特化したSNSです。

個人のキャリア形成や企業の発信、採用活動などが日々活発に行われています。

最近では名刺代わりにLinkedInプロフィールのQRコードを見せる人も増えてきているくらいです。

InstagramやTikTokなどのSNSと異なり、個人的な出来事の発信は行わず、
仕事やキャリアのことのみに特化したものとなっています。

本名で登録し、自分の経歴・スキルなどを詳細に記載したプロフィールを作ります。

私がスウェーデンへの転職を決めた時もLinkedIn経由でのやりとりから始まりました。

またCV(日本でいう職務経歴書)の準備も欠かせません。
これは入社したい企業に応募する際に必須となります。

書き方は至ってシンプルなので「CV 書き方」などで検索すればいろんなフォーマットが見つかります。

個人的な意見としては写真やカラフルな配色は必要なく、
シンプルであなたの経験・スキル等がわかりやすい形になっていることが大切です。

またCVは使いまわすのではなく、応募する企業やポジションによって細かく調整するべきでしょう。

ネットワーキング

非常に残念なのですが、どれだけ素晴らしい経歴があり、
美しいCVやプロフィールを作成してもそれを見てくれる可能性はほぼ0といって良いでしょう。

特にスウェーデンは近年厳しい環境になってきているので、
一つの求人に数百人が応募することになります。

そこでLinkedInなどを利用してネットワークを広げることが重要です。例えば、

  • 興味のある会社
  • 日本市場とコネクションの強い会社
  • 日本で強い分野で事業展開をしている会社
  • 自分の強みを活かせるポジションのある会社
  • スタートアップで拡大中の会社

などの会社の人とコンタクトを取ってみると効果があるかもしれません。

会社の人に認知され、十分な経歴を知ってもらうことが一番大切で、一番難しいです。

めげずに積極的にネットワークを広げる活動を続けているといい結果に繋がるかもしれません。

ヨーロッパではこのように積極的に会社にコンタクトをとる求職者が多くいるので
恥ずかしがったり、無視されるのを恐れて行動しなければ埋もれてしまうでしょう。

もちろん、企業の採用担当からコンタクトがあるケースも珍しくありません。

労働市場が活発な時は、人材を求める企業側が積極的に動きますが
いつでもその状況であるとは限らないので自ら動く積極性もとても大切です。

日本においてコネ入社というのはよく思われない傾向にありますが、
ヨーロッパではよほど傑出した経歴がない限りはコネの力が偉大だということを思い知りました。

もしあなたの周りに興味のある国や会社と関わりのある知人がいるのであれば、
その人にお願いして繋げてもらうというのが一つの近道になるかもしれません。

まとめ

以上、スウェーデンと他の北欧諸国の労働市場のリアル、
またその中でどのように仕事を見つけるかということについてまとめました。

最近のスウェーデンにおける労働市場は非常に厳しいもので、
ある会社で解雇があったというニュースがちょこちょこあります。

解雇をする場合は正当な理由が必要で、簡単ではないということになっていますが、
現在は業績悪化という理由があるために解雇が進んでいます。

このためスウェーデン人ですら国内での職探しは困難となり、
デンマークなどの他国で職を見つける人が増えているとのことでした。

移民として働いている私たちにとってはかなり危機的な状況です。

こんな状況なので日本からスウェーデンでの仕事を見つけるのはかなり難しい状態です。

しかし自分の強みと求められている人材を理解した上で、
業界でのネットワークを構築することができれば
どこの国であっても転職は不可能ではないと考えています。

結局コネかよ!って思われるかもしれませんが、結局はコネです。笑

私の元同僚から現在の会社への応募がある時は、現上司はその人の働きぶりはどうだったか、
チームにフィットしそうか、ということを私に尋ねてきます。

いい人が知り合いにいたら教えてほしいとも言われますね。

それくらい、応募者のことを知っている人からの意見が重要視されています。

海外転職に興味のある人は少しでもネットワークを広げておくと
いずれ採用の拡大が始まった時にチャンスが転がってくるかもしれません。

戦略的に動いてハードルを乗り越えていきましょう!

参考
SCB
IMDi
DANMARKS STATISTIK
Statistics Finland

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