スウェーデンでは保育園から大学まで、平等に学ぶ権利が保障されています。
そのため教育制度はしっかり整っていて、義務教育は無料である上に、他のお金がかかる部分であっても他の欧州の国と比較すると安く済むといった特徴があります。
この記事では、スウェーデン在住の私がそのような教育システムをまとめました!
今回はFörskola(保育園)編となります。
これから移住を考えている人やスウェーデンの教育制度に興味のある方に役立つ内容となっています。
Förskola (保育園)
スウェーデンでは1歳から就学前(6歳直前)までの子どもを対象とした保育施設として、förskolaがあります。自治体が運営している公立のものが主ですが、市営のものもあります。どちらを選んでも同じ保育料となっています。
申し込みや制度
基本的には同いような制度となりますが、部分は自治体によって変わってきます。今回は参考としてストックホルムの制度を紹介します。
参考:ストックホルム市ホームページ https://forskola.stockholm/
項目 | 内容 |
いつから権利があるか | こどもが1歳になった日以降利用する権利が与えられる |
申し込み要件 | いずれかを満たす必要がある – 家族全員が個人識別番号(Personnumer)を持っている – 家族全員が EU 市民であり、雇用証明書/学習証明書とストックホルムの将来の住所の証明を持っている – 保護者は、スウェーデンでの就労許可(AT-UND)が記載された有効なLMAカードを持つ難民申請者 |
Förskola探しと申し込み | 1. 自治体のwebサイトを確認して候補となるförskolaをピックアップ 2. 希望するförskolaに直接連絡をとり、見学したり先生と話したりする時間を取ることも可能 3. 自治体webサイト内のサービスから申し込み(最大5つの希望を出せる) |
待機制度 | ストックホルムにおいては3ヶ月以内にどこかの保育園への入園が可能となる。(*必ずしも希望が通るとは限らない) |
普遍保育 | 3~5 歳児について、1 日あたり最低 3 時間までは無償で提供される制度がどの自治体でもある。 |
両親が必ずしも働いていなくても保育園に預けられるというのが一つ特徴です。
もちろん両親が働いている場合の方が長く預けることが可能なのですが、実は親が就学中・求職中などの場合にも当てはまります。
親が共働き→保育園の利用が認められるといった日本の形とは少し違いますね。
待機制度については上記での記載しているように、「3ヶ月以内に必ずしも希望の保育園に入れるというわけではなく、どこかの保育園は提供しますよ」という意味となります。
まずは希望の保育園を確認し、満員であれば他の近場の空きがある保育園を提供する、という流れとなります。
だから評判のいい保育園を希望にすると、空きが出るまで時間がかかり、待機時間が長くかかるということもあるようです。
逆にいうと、できるだけ早いうちから保育園の待機の列に入っておくことで希望が叶う確率も上がるようです。
私のストックホルムに住んでいる知人は、子どもが生まれてパーソナルナンバーをもらったらすぐに申し込みをしている人もいました。
これで約1年は時間が稼げることになりますが、それでも足りない場合もあるようです。
またスウェーデンでは8月が学期はじめの時期となり、多くの児童が卒園して空きがでやすいタイミングなので、このようなタイミングを狙って申し込みをするというのも一つの手ですね。
Skollagen1というスウェーデンの教育法により、どの自治体も最大4ヶ月以内に保育園を提供する必要があることが定められています。
法律で最低基準が定められているので、ストックホルム以外でもしっかりと保育園は提供されるようです。
費用
ストックホルムだけでなく、他の自治体においても保育園の費用はそれぞれの家庭の世帯収入や保育園の利用時間などから計算されます。
こちらはストックホルムでの例です。
- 世帯の月収(59,440 SEK / 月以上の場合は上限額)
- 同じ世帯から保育園に通っている子どもの人数
- 子どもが保育園にいる時間
この支払額には子ども一人当たりにおける上限が設けられています。
子どもの年齢(3歳以上・未満)と保育園にいる時間で計算が異なるのでそれぞれ紹介します。
1, 2歳・週30時間未満
1, 2歳の場合は週30時間を目安にフルタイムとパートタイムに分けられます。
- 子ども1(末っ子):月収の2% (上限1,189 SEK)
- 子ども2・3:月収の1% (上限594 SEK)
- 子ども4以上:無料
1, 2歳・週30時間以上
週30時間以上ではフルタイムととしての計算になります。
- 子ども1(末っ子):月収の3% (上限1,783 SEK)
- 子ども2:月収の2% (上限1,189 SEK)
- 子ども3:月収の1% (上限594 SEK)
- 子ども4以上:無料
3 – 5歳・週15時間未満
3 – 5歳の子どもは週15時間以内であれば無料となります。
3 – 5歳・週15時間以上
3 – 5歳で週15時間以上となると、上記の1, 2歳のパートタイムの時と同じ計算になります。
- 子ども1(末っ子):月収の2% (上限1,189 SEK)
- 子ども2・3:月収の1% (上限594 SEK)
- 子ども4以上:無料
保育の特徴
入園する保育園と入園日が決まると、初日から1-2週間はinskolning(慣らし保育)が始まります。
大体2週間以内では終わるみたいですが、難しい場合はより長い期間を取ることもあるようです。
- 親と一緒に保育園で過ごす
- 過ごす時間を伸ばす
- 親が一時的に保育園から離れる
- 離れる時間を伸ばす
- 半日親が完全に離れる
- 昼食・お昼寝もしてみる
順序や慣らし保育にかかる時間は保育園や子どもによるのですが、ざっくりとこのような内容となっています。
日本の慣らし保育よりも、親と一緒に保育園で過ごす時間が長い印象を受けました。
外遊びを重視している印象を受けます。雪の降る寒い季節でもしっかりと防寒具を身につけさせて外で遊ぶ時間を作っています。
多少天気が悪くても服装をしっかりすれば大丈夫、というのがスウェーデン人の考え方で、外で遊んだり自然触れたりして過ごす時間を重視する傾向は保育にも当てはまるようです。
また遊びを通じた学びも重視されており、言語を学んだり、数を数えることを学んだり、といった活動もされています。また、創造性や社会性なども育める環境作りや活動も重視しているようです。
これはそれぞれの保育園によりますが、朝は6時-6時半から開所して朝ごはんを提供する場合が多いです。
夕方はだいたい18時-18時半までとなっています。
保育園にも夏休みやクリスマスなど長期休暇はあります。夏休みはなんと1ヶ月!
ただし、すべての保育園が休暇で閉まるわけではありません。
休暇シーズンでも数カ所の園は空けておいて、希望者はそこに子どもを通わせるという形になります。
大人もこの時期は多くの人が休暇を取るので、ほとんどの子どもが休むことになると思われます。
Skollagen(スウェーデンの教育法)によると、保育の「質(kvalitet)」や「安全(säkerhet)」を確保する責任があることが規定されていますが、教員が何人の児童を対象とするかということについては明確なルールはなく、目安となる目標が設定されているようです。
国全体(Skolverket)の指針としてはこのようになっています。2
1-3歳グループ:6〜12人 / グループ
4-5歳グループ:9〜15人 / グループ
このグループのサイズに適切な人数の先生が配置されるというのが目安とされています。
2024年のストックホルムの公式データによると、全体として先生一人あたり5.1人の児童というような割合だったようです。3
1-3歳グループではこれよりやや少なく、4-5歳グループではこれよりやや多くなっていそうですね。
実際に私の子どもが通っている園でも、1-3歳グループでは先生1人あたり4-5人の児童となるように調整しているようです。
2: https://www.skolverket.se/download/18.6bfaca41169863e6a65bd5e/1553966502266/pdf3584.pdf?utm_source=chatgpt.com
3:https://www.skolverket.se/sok-publikationer/publikationsserier/beskrivande-statistik/2025/barn-och-personal-i-forskola—hosten-2024?utm_source=chatgpt.com
まとめ
以上スウェーデンのFörskola(保育園)についてでした。
私の子どもも1歳頃からお世話になっており、楽しんでいるようです。
inskolning(慣らし保育)のときは案外すぐに馴染んでくれたと思ったのも束の間、しばらくすると保育園に連れて行くと大号泣するようになってしまいました。
あまりにも酷いので、午前中のうちにお迎え要請をいただく日が続き、もう一度慣らし保育に戻るなんてことも。。。
日本の保育園では、体調不良以外でお迎え要請はしないという話も聞いたので、この辺りに保育の考え方の違いがあるのかと感じました。
他にも日本との違いといえば0歳児クラスがないということでしょうか。
0歳児用のサービスも探せばあるのかもしれませんが、一般的には1歳以上の子どもが対象となっています。
育休制度が充実していて、両親がそれぞれしっかりと育休を取ることができるために0歳児クラスは必要ないのかもしれませんね。
また日本では先生一人当たりの児童数が法律で義務付けられているというのも一つの大きな違いですね。
スウェーデンのとある保育園では、目標値を大きく上回る人数の児童を一人の先生が担当しているということもありました。
やはり子どもの健やかな成長と安全のためにある程度の上限が設けられているというのは大切なことなのかもしれません。
以上、スウェーデンの教育に興味のある方や移住を考えているかたの参考になりますと幸いです。
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